二尊院を出てひたすら歩くと清涼寺にたどり着いた。13時55分。14時に間に合ったぁセーフ!
清凉寺。実は今回初めて知ったお寺で、千本釈迦堂と区別するために嵯峨釈迦堂とも呼ばれている。さっき行ったさっき行った、盛り上がった!
この日、4月19日、清涼寺では年に一度の御身拭式というものが14時から行われるらしく、事前に檀家さんなどから寄進された白い布で御本尊さまを拭く行事なのだそう。
清凉寺には釈迦如来立像が御本尊として祀られているが、秘仏のためいつでも見られるというわけではないらしい。
たまたまどのルートで回ろうか考えてたときにそれを知り、一般参加もできるならせっかくなので参加させていただこうと思った次第だ。狙って休みを取ったわけでもないのに、ラッキー!
しかしやっぱり空腹は良くないよね。
なんか知らないけど一目散に宝物館行っちゃったよ。入り口のおばちゃんに「本堂行かないの?」と聞かれたけど「行かないでーす」とか答えちゃってる辺り、頭回ってなかったんだろうな。
しかしここの宝物館も一見の価値あり! 国宝の仏像が度肝抜かれるほどデカイ! なぜ今まで知らなかったのか。次はもうちょっとちゃんと見ます。
そして会場間違えたことに気付いて慌てて本堂へ向かう。
さっきのおばちゃんに聞いたら、本堂で宝物館のチケットを見せると共通券扱いにしてくれるとのことで、本堂で追加料金を支払いいざ御身拭式へ!
あれ、意外と見てる人少ない……。本堂の床に正座して、真正面で見てしまった。
読経の響く中、式は厳かに進んでいく。お経についてはそれほど詳しくないのだが、あれって一種の音楽みたいだと改めて思う。鐘とか銅鑼とか木魚とか、楽器を用いてリズムを刻んで唱えるのだから。
足が……痺れる……。耐え難い……。
うずうずしていると、前のおばちゃんが突然なにかを覗き込むように正座から膝立ちになった。にょきっと芽を出したタケノコのようだ。しばらくするとまた正座に戻る。
あ、そうか! おばちゃんも足痺れてるんだ! ああやって痺れをやり過ごしてるんだ!
あーたーまー良い!
さっそく真似したら、他の人もやり出した。みんな足の痺れと戦っていたのだ。痺れが抜けるまで結構かかるけど、ずっと正座してたら転んじゃうから定期的に行った。タケノコ戦法。お葬式でやったらさすがに目立ってダメかな。
20分ほど経った頃、住職さんがなにやら棒のようなものを周りのお坊さんから受け取り、お経を唱えながら円を描くようにその棒を回し出した。するとそれに合わせて釈迦如来さまを隠している幕がロールスクリーンのように上がっていくではないか。住職さんが魔法使いのように見えてくる。
自動で上がる幕。途切れることのないお経。魔法のステッキ……。お腹が鳴りそうなので、お経が途切れないのは大変ありがたい。
現れた御本尊の釈迦如来立像は、ちょっと頭が大きめの仏様。優しいお顔が印象的。布で出来た五臓六腑が御体に収納されていたことから、生きた仏様として扱われている。
私が座ってたのは正面とはいえ結構距離があったのにもかかわらず、お姿はしっかり見える。御体がとても輝いて見えたので、てっきり金でも貼ってあるのだと思ったらなんと木目の仏像さまだった。帰って検索してビックリした。あんなに輝くものなのか。
住職さんが脇の階段から釈迦如来さまの台にゆっくりと上がる。控えているお坊さんから白い布(反物)をひとつずつ受け取って、頭、肩、体の順でさっと拭っていく。ゴシゴシするわけではない。
この布は式が終わるとご寄進した人のもとへと贈られる。反物なので、これで装束を作り、死んだ時に身に付けると極楽浄土に行けるのだそうだ。
22回ほど布を替えて繰り返し、御身拭を終えると、また元の位置に戻り、住職さんと僧侶たちによる読経が始まる。
14時45分頃に式は終わり、住職さんの説法を聞く。時おり腕時計をチラチラ見ながら、15時に終わればなんとか行けるだろうと考えていたら、15時を前にして式がすべて終了となった。
はー、見ることができて本当に良かった。
だが、ゆっくりはしていられない。京都駅に戻らねばならないのだ。清凉寺からJR嵯峨嵐山駅まで徒歩20分ほどとなっていたが、事前に調べたところ電車は約20分に一本。乗り逃すと慌てるのは目に見えている。
バスは渋滞などで時間が読めないため、帰りはJR一択。一応乗り逃しても、その次に乗れれば新幹線には間に合う計算だが、最後の最後で慌てるの嫌だもんね。
という事でJR嵯峨嵐山駅まで必死に歩いたらギリギリ乗れた。だがしかし、めちゃくちゃ混んでいる。運良く座れたが、次の駅などで下校の高校生がなだれ込んでくる。この電車4両編成無理じゃない? 埼京線かよ、と思っていたら、後日観光客多すぎて地元民が乗れないという記事が出ていた。増やそう……せめてあと1両……。
16時前に無事京都駅着。電車を降りたら、向かい側のホームにキティちゃんの電車が停まっていた!
なんだこれは、と思って見てみたら、関西空港まで行く「はるか」という電車だった。白いボディに着物を着たキティちゃんがかわいい。
はー……なんかすごく良い旅だったなぁ。行く先々でいろいろツイてた。やっぱり京都は別格だ。
新幹線に乗り、ふと外を見ると、雨が降り出した。結局傘は使わなかった。ラッキー!