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【残042話】聖なる血の裁き(8)
ワンドの先から白い閃光を何度も何度も放つと、それは瞬く間に大きく炸裂した。神聖魔法の中でも一番威力の弱い魔法ではあったが、それでもただのハイブリッドが相手ならば十分すぎるほどの威力を発揮した。その証拠に、閃光の走った後には無数の灰の山... - † 残 †
【残041話】聖なる血の裁き(7)
辺りはいつの間にか大量の灰で溢れていた。わずかな風でもそれは砂塵を含んで醜く濁っていた。 先ほどから、身体が鉛のように重い。 時間を経るごとに荒く、早くなる呼吸。時おりぼやける視界が、限界の近さを知らせている。 それでも、まるで衰え... - † 残 †
【残040話】聖なる血の裁き(6)
しかしその間にも残った男たちは次から次へと襲い掛かってきた。 このままではリーディアの負担は増す一方だと悟ったエルフェリスはふらつく頭を何度も振って、それから肢体に力を込めてワンドを杖代わりに立ち上がる。一瞬目の前が真っ暗になり身体が... - † 残 †
【残039話】聖なる血の裁き(5)
「うぐっ?」 リーディアの行動が理解できないのか、男は初め訝めると、男の口から大量の血が溢れ出した。 エルフェリスから吸い取った赤い血が。 リーディアはその時を見計らってさっと身を交わし、地べたに座り込むエルフェリスを抱えると、素早く... - † 残 †
【残038話】聖なる血の裁き(4)
「しかし俺たちも見くびられたモンですよね、まさかドールなどから指図されることになろうとは」 この場の緊張感とは正反対の軽さを含んだその声に、リーダーらしきあの赤目の男は大きく欠伸をしながら面倒そうに同意した。その言葉に、エルフェリスとリ... - † 残 †
【残037話】聖なる血の裁き(3)
「二人とも殺して良いと言われているんでね」 男の中の一人がそう言って、白い牙を覗かせた。 「誰の差し金ですの……」 そんな中、ようやく息を整えたリーディアがゆらりと立ち上がり、エルフェリスを庇うように一歩前へ進み出た。 満身創痍の体でな... - † 残 †
【残036話】聖なる血の裁き(2)
「……な……ッ」 エルフェリスは驚愕のあまり絶句した。 初めて見る男だった。すらりとした長身に、長く伸びた髪の毛を風になびかせ、まるで先ほどからそこにいたかのようにごく自然に、笑みを浮かべて立っていた。 少しばかり骨ばった顔が印象的ではあ... - † 残 †
【残035話】聖なる血の裁き(1)
道なき道をリーディアに手を引かれながら、一歩一歩を確かめるようエルフェリスは進んだ。 月も姿を隠す今夜は異様なほどに静かで、そして何より闇深い。先ほどに比べればだいぶ目も慣れてきたが、それでもやはり不自由さは拭いきれず、時おり地面から... - † 残 †
【残034話】手がかりと甘い罠(7)
「あら、おかえりなさいませ。エルフェリス様」 二人と別れたエルフェリスが自室のドアをゆっくり開けると、窓辺に置かれたテーブルの縁に腰掛けてティーカップを傾けるリーディアに声を掛けられた。 「あれ? まだ寝てないの?」「お帰りをお待ちして... - † 残 †
【残033話】手がかりと甘い罠(6)
その後、デューンヴァイスの部屋を一足先に出たエルフェリスは一人、部屋が立ち並ぶ回廊に備え付けられた広いバルコニーの手すりに漠然と身を預けたまま、ゆっくりと昇りゆく太陽を見つめていた。 この城に来てからはヴァンパイアの生活に合わせていた... - † 残 †
【残032話】手がかりと甘い罠(5)
「今……何て言った?」「え? 十字架のネックレスだよ。クリスタル製かなぁ……ドールが十字架身に着けてるのなんて初めて見たからさぁ、不思議で、ねぇ?」 それがどうしたの、とレイフィールは屈託の無い笑顔を見せたが、エルフェリスは逆に、身体全体か... - † 残 †
【残031話】手がかりと甘い罠(4)
「誰だ? エリーゼって」 すると、話の成り行きが分からないロイズハルトがすかさずそう呟く。それに対してエルフェリスは手短に内容を説明してみせた。合わせてレイフィールにも解りやすいように、簡潔に、けれども丁寧に。 が、やはりここでも彼女... - † 残 †
【残030話】手がかりと甘い罠(3)
エルフェリスたちの視線が一斉に部屋の入り口へと向けられる。入ってきた男はいきなり注目を浴びたことに対して少々驚いたようだったが、何かを悟ったのかすぐに口元を緩めた。 「なんだ? 揃いに揃って……。俺も混ぜろ」 そう言ってにやりと笑った男... - † 残 †
【残029話】手がかりと甘い罠(2)
「やれやれ、レイのせいで進む話も全然進みやしない」 エルフェリスとレイフィールの手が離れたのを見届けると、デューンヴァイスは心底疲れたように床の上で大きく胡坐をかいてそう言った。その言葉に、エルフェリスも一連のやり取りの中ですっかり忘れ... - † 残 †
【残028話】手がかりと甘い罠(1)
「……いったぁ! まだ痛いよッ! デューンのせいだからね!」 氷のうを頭に載せたまま、レイフィールは向かいのソファに腰掛けるデューンヴァイスに非難の眼差しを向けた。 けれど対するデューンヴァイスはどこ吹く風。まるで気にした様子もなく、し... - † 残 †
【残027話】ルイという男(3)
「どうしたの?」 慌てて顔を覗き込むと、熱っぽい眼差しでエルフェリスを見上げるレイフィールと目が合った。 アイスブルーの瞳が、すぐそばで揺らめいている。その呼吸はわずかに乱れていた。 「レイ……?」 もう一度名を呼ぼうとするよりも前に、... - † 残 †
【残026話】ルイという男(2)
その一方で、一人眉をひそめるエルフェリス。 「ん? ……ルイって誰?」 突然出てきた聞き慣れない名前に首を傾げると、談笑を続けるレイフィールの代わりに、彼のドールの一人がすっと口を開いた。 「ルイ様はシードのお一人ですわ。エルフェリス様は... - † 残 †
【残025話】ルイという男(1)
結局エルフェリスとリーディアは茶会のほとんどを茂みの中で過ごした。別に親しい誰かがいるわけでもないし、エリーゼの行方を捜すのもまた次の機会にすればよいと思って、エルフェリスは新たな友人となれるであろうリーディアの言葉に終始耳を傾けた。 ...