† 残 †– category –
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【残019話】吸血人形ドール(3)
「よし、好きなの選べ。てか好きなだけ選べ。どうせ服もあんまり持って来てないんだろ?」 本当に衣装だけの部屋なのかと思うほど広いクローゼットのど真ん中でようやく下ろされたエルフェリスに、デューンヴァイスは至極楽しそうにそう言うと、自らはそ... - † 残 †
【残018話】吸血人形ドール(2)
「よっ!」「なんだ……、デューンか」 長身の背を少し丸めて気さくに片手を上げる男の姿を認めると、エルフェリスは人知れずほっと胸を撫で下ろした。そこにいたのは誰でもない、エルフェリスがこの城に残るために一緒に奔走してくれたシードヴァンパイア... - † 残 †
【残017話】吸血人形ドール(1)
幼い頃、大好きだった人形があった。何度目かの誕生日のお祝いに、司祭が買ってくれた女の子の人形。目は大きくて、髪は金色の巻き髪。キラキラ輝くドレスがお気に入りで、眠る時まで一緒だった。 女の子だったら、誰もが一度はそんな人形を持ったこと... - † 残 †
【残016話】光と闇の接点(2)
ここまで重大な秘密を共有する自分にも話せないようなことが、彼らの暮らすあの小さな村の中にあるのだろうかとロイズハルトは疑念の目を向ける。 だが何かを疑ったところで、エルフェリスに襲い掛かる脅威を振り払えるわけではないのだ。殺されるだけ... - † 残 †
【残015話】光と闇の接点(1)
知らなければ良いことなんて生きている上では幾つもあって、いちいち覚えていられない。 聞かなければ良かった、知らなければ良かったと思っても、時が経てばそのうち忘れてしまうのだろう。 人間の記憶なんて物は、実に曖昧だ。 エルフェリスが眠... - † 残 †
【残014話】夜明け前(2)
不思議な組み合わせの訪問を受けて、初めロイズハルトは呆気にとられたような表情で眉をひそめた。そんなロイズハルトを半ば押し込む形で部屋へと入った二人は、彼の逆鱗に触れないうちにさっさと本題を切り出した。 そして冒頭のやり取りへと繋がるわ... - † 残 †
【残013話】夜明け前(1)
明けない夜は無いと、誰かが言っていた。 どんなに追い詰められようが、どんなにどん底に叩き落されようが、必ずどこかに打開策はあるものだと。 使い古されたその文句に、一体どれだけの人が救われてきたのかは知らないが、自分にはあまり意味の無... - † 残 †
【残012話】共存の盟約(2)
「リーディアは反対のようだけど、ゲイル司祭としてはどう?」 押し黙ったまま一点を見つめ思案するエルフェリスをよそに、無邪気に明るい声色でそう司祭に意見を求めたのは、シードヴァンパイアのレイフィールだった。 彼はこの議題に対して両者がど... - † 残 †
【残011話】共存の盟約(1)
一見聞こえは良いが、共存なんて言葉は、裏を返せば互いに牽制するための便利な表現に過ぎない。 この会議においては特に。 元々敵対していた者同士が己の身を守る為だけに結んだ盟約なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。 ヴァンパイ... - † 残 †
【残010話】三人のシードヴァンパイア
時が止まるようだ。 という表現を、今使わずしていつ使うのだろう。 エルフェリスは今、そんな心境にあった。 呼吸を忘れた身体。 苦しいはずなのに平気だ。 酸素を失っても、きっと気付かずに生き続けるのだろう。 そんな衝撃。 「エル……エルフェ... - † 残 †
【残009話】三者会議の幕開け
第二夜 三つの思惑 いつの頃からかそれは、“三者会議”と呼ばれるようになった。五~十年に一度、人間・シードヴァンパイア・ハイブリッドヴァンパイアの主導者が一同に会し、互いの共存の為に盟約を結ぶのだ。 人間側は毎回、エルフェリスの村の最高... - † 残 †
【残008話】薔薇の居城
禍々とした空気が渦巻いていて窒息してしまいそうになる。 そんな空間を想像していた。 初めは。 けれどすぐにそのイメージは崩される。 良い意味で。 あれからわずかな休憩を何度か挟んだものの、文字通り夜通し馬車を走らせて二度目の夜明けを迎... - † 残 †
【残007話】麗しの案内人(2)
出立の時が来た。 エルフェリスとゲイル司祭は一度だけ顔を見合わせると、互いに大きく頷いて、一歩一歩を確かめるようにゆっくりと客車へ足を踏み入れた。 車内にはお互いの顔が分かる程度の蠟燭模様が白で描かれ、座席は藍色の上質なベルベッドで... - † 残 †
【残006話】麗しの案内人(1)
月明かりは時に、迷える者への道標となる。けれど新月である今夜は反対に、果てしない暗闇に吸い込まれてしまいそうな感覚に陥った。 手を伸ばしても、そこには柔らかな光で輝く月は存在しないのだから。 今日が約束の夜。村中一切の外出を禁じられ... - † 残 †
【残005話】ヴァンパイアからの招待状(2)
やはりこの男もまだエリーゼを諦めてないのかと、相変わらずの執着の深さに、エルフェリスはそれまでの固い表情を崩して思わず苦笑してしまった。どうしたらそこまで誰かを一途に想い続けられるものなのだろうか。 私には理解できない、と。 「で? ... - † 残 †
【残004話】ヴァンパイアからの招待状(1)
それはわずか二日前の事だった。 月明かりも姿を消した、漆黒の新月の晩。夜も深く更けた頃、人目を忍んでひっそりとこの教会を訪れる二つの影があった。 どちらも黒いマントに黒いフードを目深に被り、自らの姿を闇に溶け込ませるようにひっそりと... - † 残 †
【残003話】消えた姉(2)
「いつからそこにいたの? デストロイ」 だからあえてわざわざ視線を動かすこともないだろうと、前を見据えたままでそう言ってみせた。すると短く笑う声と共に気配が近づいてきた。 「やっぱお前ただ者じゃねぇな、エル」 不機嫌そうな表情を崩そうと... - † 残 †
【残002話】消えた姉(1)
第一夜 招待状 いつも思い出すのだ。 この灰色に淀んだ空を見ると。けたたましいくらいの雨音を聴くと。 「エルフェリス。私、シードヴァンパイアに逢ったの」 限りなく美しくて、限りなく誇り高いシードに……。 そう言って、忽然と消えた姉エ...